White Album 2/Script/2014
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Editing
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Text
Speaker | Text | Comment | |||
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Line # | JP | EN | JP | EN | |
1 | 『レポート、お疲れさま』 | ||||
2 | 『春希くんが冬休み前ギリギリまで 頑張らないといけないなんて、 随分と厳しいゼミなんだね』 | ||||
3 | 『わたしの方は、毎週課題が出るには出るけど、 ほんの数時間で終わるくらいの量だから、 今のところ、ゼミであまり拘束されたことないなぁ』 | ||||
4 | 『でも実は、卒論厳しいらしいんだよね。 毎年必ず1人は卒業できない人が出るんだって。 …オンリーワンにならないように頑張ろっと』 | ||||
5 | 『そういえば、もう卒論のテーマは決めた?』 | ||||
6 | 『自分でテーマを決めて自分で動くのって、 こういう勉強の仕方初めてだし、 海の真ん中に放り出されちゃった感じ』 | ||||
7 | 『でも春希くんにとっては、 水を得た魚って感じなんじゃないかな?』 | ||||
8 | 『春希くんは、昔から授業とか真面目に聞く だけじゃなくて、関係することにも興味を持って、 テストに出ないことまで色々と勉強してたもんね』 | ||||
9 | 『そういうところ、ずっと尊敬してました。 わたしの自慢でした』 | ||||
10 | 『なんてね。 自分が偉いわけじゃないのに、 自慢するのって、おかしいよね…』 | ||||
11 | 『それじゃ、頑張って。 レポート終わったらまたメールしてね』 | ||||
12 | 『そしたら今度は、おめでとうメール送ります。 また後で、ね』 | ||||
13 | 千晶 | Chiaki | 「~~~っ、わったぁぁぁぁ~!」 | ||
14 | 春希 | Haruki | 「じゃ、見せてみろ」 | ||
15 | 俺の向かいに座っていたはずの和泉は、 意味不明の奇声を上げると、 漫画の間男のようにベッドにダイブしていた。 | ||||
16 | ノートパソコンの画面には、確かに『以上』とあり、 20日余りにわたる壮絶な戦いに 終止符が打たれたことを示唆していた。 | ||||
17 | …とりあえず最終ページだけはな。 | ||||
18 | 千晶 | Chiaki | 「もう頭が動かない~。 体も動かない~。 あと一月はなにもしたくない~」 | ||
19 | 春希 | Haruki | 「人のベッドで泳ぐな」 | ||
20 | 動けないとか言いつつ元気いっぱいだし。 | ||||
21 | とりあえずページを最初に戻して、 『俺のじゃない』レポートのチェックを始める。 | ||||
22 | 春希 | Haruki | 「…っと」 | ||
23 | いきなり表紙でつまずいた。 | ||||
24 | タイトルと表紙と名前が入ってない。 というか、それって白紙… | ||||
25 | 千晶 | Chiaki | 「とりあえず24時間寝る! 起きたらお腹いっぱいご飯食べる! それからそれから…三大欲求の残り一つどうしよ?」 | ||
26 | 春希 | Haruki | 「トイレならドアを出て左」 | ||
27 | 千晶 | Chiaki | 「それは残りの一つを、 排泄欲と性欲のどっちに解釈しての発言?」 | ||
28 | 春希 | Haruki | 「どっちも充足するっちゃぁするだろ」 | ||
29 | 千晶 | Chiaki | 「あたしの悩ましい声とか聞こえてきてもいいの?」 | ||
30 | 春希 | Haruki | 「帰れ」 | ||
31 | …あ、誤字めっけ。 | ||||
32 | 千晶 | Chiaki | 「春希冷たい~! 20日間もずっと一緒の釜の飯を食べた戦友なのに!」 | ||
33 | 春希 | Haruki | 「同じ釜の飯を食ったのは3回だけだし、 俺が望んだわけじゃないし」 | ||
34 | あとは、改行位置と文字サイズの調整と… あ、ここは強調入れた方がいいな。 | ||||
35 | 千晶 | Chiaki | 「何言ってんの。 あたしのレポート提出なんて、 春希以外に誰も望んでないでしょ」 | ||
36 | 春希 | Haruki | 「卒業目指そうぜ、大学生」 | ||
37 | 参考文献リストは…きちんと入ってる。 よし、あとはセーブして… | ||||
38 | 春希 | Haruki | 「こんなところかな。 うん、確かに終わってる」 | ||
39 | 千晶 | Chiaki | 「…マジ?」 | ||
40 | 春希 | Haruki | 「少しだけ体裁はいじったけど、 内容に関しては文句の付けようはないな。 少なくとも俺にとっては」 | ||
41 | 千晶 | Chiaki | 「…大マジ?」 | ||
42 | 春希 | Haruki | 「論理が飛躍してるって言われるかもしれないけど、 そもそも民間伝承が必ず理に適ってる訳でもなし。 ちゃんと考察もしっかりしてるし、何より面白いし」 | ||
43 | 千晶 | Chiaki | 「うわぁ… 春希にそこまで誉められたの初めて」 | ||
44 | 春希 | Haruki | 「お疲れ、和泉。 よく頑張ったな。お前にしては」 | ||
45 | 千晶 | Chiaki | 「うっしゃぁぁぁ~、やったぁぁぁ~!」 | ||
46 | 春希 | Haruki | 「俺が合格って言っても進級できるとは限らないぞ。 採点するのは教授なんだから」 | ||
47 | 千晶 | Chiaki | 「いいよもう、春希に認められたんだから。 一緒に頑張ってきた甲斐があったよね」 | ||
48 | 春希 | Haruki | 「和泉…」 | ||
49 | 捨て猫に餌をやる不良補正かもしれないけど、 ちょっとだけ感無量。 | ||||
50 | …しまった、日本語間違えた。 無量がちょっとって、どんなんだよ。 | ||||
51 | 千晶 | Chiaki | 「あ~も~、安心したら一気に力抜けた。 もう頭が動かない~。 体も動かない~」 | ||
52 | 春希 | Haruki | 「安心する前から思いっきり脱力してるくせに」 | ||
53 | けどまぁ、今はそれくらい こいつを認めてやってもいい。 | ||||
54 | いくら俺が無理やり追い込んだとしても、 和泉のやる気がなければここまでの結果は出なかった。 | ||||
55 | …例えその動機が、 保身のため以外の何物でもないとしても。 | ||||
56 | 千晶 | Chiaki | 「ね~春希、打ち上げしようよ。 冷蔵庫にビール残ってたよね? 6缶入りの箱が丸ごと!」 | ||
57 | 春希 | Haruki | 「なんでお前がウチの冷蔵庫の中身を知ってるんだ? 俺でさえそんなの覚えてなかったのに」 | ||
58 | 千晶 | Chiaki | 「あ、魚肉ソーセージもらったよ。 安心して、1本だけ残してあるから」 | ||
59 | 春希 | Haruki | 「ったく…」 | ||
60 | こいつには遠慮というものが… まぁ、皆無なことは最初からわかってたか。 | ||||
61 | 冷蔵庫を開けると、 そこはすっかり食い荒らされて空っぽに… なんて、さすがにそんなことはなかったけど。 | ||||
62 | 缶ビールの6缶パックが確かに1箱。 魚肉ソーセージが確かに1本。 あと、スライスチーズが1パック。 | ||||
63 | この前、武也たちが残していった菓子と合わせると、 カナッペくらいは作れそうか。 | ||||
64 | よし、それならなんとか… | ||||
65 | 春希 | Haruki | 「あ…」 | ||
66 | なんて、どうでもいい予定を頭に描いたけれど、 そんな楽観論は時計を見て、時とともに止まった。 | ||||
67 | 千晶 | Chiaki | 「どしたの? 冷蔵庫空っぽ? だったら買い出し行こっか」 | ||
68 | 春希 | Haruki | 「いや…」 | ||
69 | 終電まで、あと一時間。 | ||||
70 | 千晶 | Chiaki | 「大丈夫、おやつは3000円までに抑えるから」 | ||
71 | 春希 | Haruki | 「そういう問題じゃなくて」 | ||
72 | 今から飲み始めて、 こいつが一時間後に帰ると思うか…? | ||||
73 | 千晶 | Chiaki | 「しょうがない! 今日は特別にワリカンだ! ったく、自分のお祝いにお金出す女って珍しいよ? あたしってもう少し評価されてもいいと思わない?」 | ||
74 | 春希 | Haruki | 「和泉…」 | ||
75 | そういえば、24時間寝るとか軽く聞き流してたけど、 もしかしてこいつ、今日も泊まる気満々なんじゃ? | ||||
76 | 千晶 | Chiaki | 「さってっと、じゃあ用意するからちょっと待ってて。 あ、ついでだからさ、お酒も買い足さない?」 | ||
77 | …というか、当然と言えば当然か。 もう実績があるし、俺が駄目だとハッキリ言ってないし。 | ||||
78 | 春希 | Haruki | 「和泉」 | ||
79 | だったら… | ||||
80 | 千晶 | Chiaki | 「チューハイと、カクテルと、ビールもも少し。 あ、ワインとかボトルで買っちゃう?」 | ||
81 | 春希 | Haruki | 「今日はもう帰れ」 | ||
82 | 千晶 | Chiaki | 「ぅぇ…」 | ||
83 | ハッキリ、言わないと。 | ||||
84 | 千晶 | Chiaki | 「打ち上げ…」 | ||
85 | 春希 | Haruki | 「もうすぐ終電だ。 今から飲んでたらまた帰れなくなるぞ」 | ||
86 | 千晶 | Chiaki | 「い~のに。帰らなくたって」 | ||
87 | 春希 | Haruki | 「俺がよくない。帰ってくれないと」 | ||
88 | 千晶 | Chiaki | 「この前は泊めてくれたじゃん」 | ||
89 | 春希 | Haruki | 「この前は午前1時。今は午後11時半」 | ||
90 | 千晶 | Chiaki | 「疲れちゃったんだもん~。 もう一歩も動けないんだもん~」 | ||
91 | 春希 | Haruki | 「お前、今コンビニに行く気満々だったよな?」 | ||
92 | 千晶 | Chiaki | 「もう千歩も動けないんだもん~」 | ||
93 | 春希 | Haruki | 「そこで調整するな、帰れ」 | ||
94 | 千晶 | Chiaki | 「なんで~? どうして急にそんなに冷たくなっちゃったの春希~?」 | ||
95 | 春希 | Haruki | 「えっと………和泉のご両親に申し訳が」 | ||
96 | 千晶 | Chiaki | 「そんなこと言っちゃったら、 先週だってとっくに申し訳立たないよ?」 | ||
97 | 春希 | Haruki | 「それは…って、何もしてないだろ!」 | ||
98 | 千晶 | Chiaki | 「…ということは、今日は先週とは違って、 あたしの親に申し訳立たないことしちゃうつもり?」 | ||
99 | 春希 | Haruki | 「ない。 それはない。 絶対にない」 | ||
100 | 千晶 | Chiaki | 「…もう一つ釈然としないことができちゃったけど、 今は本筋を進めるね。 ね、ならどうして駄目なわけ?」 | ||
101 | 春希 | Haruki | 「ええと、だから…」 | ||
102 | 左手が、携帯に触れる。 | ||||
103 | 受信簿に眠る、 最新のメール十数件に並ぶアドレスが頭をよぎる。 | ||||
104 | 春希 | Haruki | 「打ち上げだったらさ、 週明けのゼミの最終日にしないか? そん時ならおごるから」 | ||
105 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
106 | けど、そんなこと言えない。 本当の理由なんか、話せるわけがない。 | ||||
107 | 千晶 | Chiaki | 『おぎそ…ゆきな? そんな感じの名前のコ』 | ||
108 | だって俺はあの時『フォローは必要ない』 って言ったんだから。 | ||||
109 | 和泉の関与を断ることで、 和泉の責任を認めなかったんだから。 | ||||
110 | 春希 | Haruki | 「大学とかウチとか泊まり歩いてないでさ、 ちゃんと帰れよ。 親だって心配してるだろ」 | ||
111 | だからもし今、 俺が和泉を泊めようとしない理由を言ってしまったら、 先週に遡って和泉の責任を蒸し返してしまうことになり。 | ||||
112 | あの一週間のこと、あのすれ違いのこと、 そして、今の仲直りしかけの状態のこと。 | ||||
113 | 和泉の一挙手一投足が、今の俺に、 とてつもなく大きな影響を与えてるって、 認めてしまうことになるんだから。 | ||||
114 | 春希 | Haruki | 「駅まで送る。 だから、一緒に出よう」 | ||
115 | 千晶 | Chiaki | 「………」 | "........."
| |
116 | 春希 | Haruki | 「和泉…ほら」 | ||
117 | 和泉が肩から落とした上着を拾い上げ、 もう一度掛け直す。 | ||||
118 | その肩は、がっくりと垂れたままぴくりとも動かず、 俺が言ったことを一割も納得してないことを 如実に伺わせていた。 | ||||
119 | 千晶 | Chiaki | 「親なんて心配してるわけないって。 どうせこっちのすることになんか興味ないんだからさ」 | ||
120 | 春希 | Haruki | 「………え」 | ||
121 | 俺の問いかけに対する答えに、 ちょっとしたタイムラグがあったせいで、 少しだけ反応が遅れた。 | ||||
122 | 千晶 | Chiaki | 「…興味ある?」 | ||
123 | 春希 | Haruki | 「っ!? あ、い、いや」 | ||
124 | 千晶 | Chiaki | 「あるんだ~。 あたしが家に帰りたがらない理由、 春希的に気になっちゃってるんだ~」 | ||
125 | またこいつは… | ||||
126 | ふてくされているふりをしながら、 いつの間にか上目遣いで 俺の瞳の揺らぎを覗き込んでいやがる。 | ||||
127 | 千晶 | Chiaki | 「ええとね、ええとね… そう、あたし幼い頃から母親に虐待されててさぁ。 背中なんかアザだらけで…見てみる?」 | ||
128 | 春希 | Haruki | 「いや、それが嘘だってことは確信してる。 理由は言わないけど」 | ||
129 | この前、人の目の前で上全部脱ぎやがったし。 | ||||
130 | あの真っ白で綺麗な背中を そうそう簡単に忘れられる訳が… | ||||
131 | 千晶 | Chiaki | 「じゃ、じゃあ! 義理の父親に性的虐待を…」 | ||
132 | 春希 | Haruki | 「もし本当だったら今からお前の家に 怒鳴り込むけどいいんだな?」 | ||
133 | 千晶 | Chiaki | 「い、いや~、 あたしのこれからの生活のことも考えてくれないと。 春希が一生面倒見てくれるってならいいけどさぁ」 | ||
134 | 春希 | Haruki | 「今のがもし完全に事実だと証明されたら、 色々な方法で全面的に援助は惜しまない」 | ||
135 | 千晶 | Chiaki | 「う…」 | ||
136 | 慰謝料の交渉とか、奨学金とか、 あと、それが世間に知れてしまったとき、 誹謗中傷から守るために手を打ったりとか。 | ||||
137 | 和泉に新しい傷を作らずに、 今抱えている傷をこれ以上拡げない方法を、 一生懸命考えてみせる。 | ||||
138 | なにしろ… | ||||
139 | 千晶 | Chiaki | 「ごめん、今のも嘘」 | ||
140 | 春希 | Haruki | 「俺じゃなくて本当に虐待で苦しんでる人たちに謝れ。 心の中でいいから」 | ||
141 | とてもオッズの低い賭けだったから。 | ||||
142 | 千晶 | Chiaki | 「やだな~もう。 どこまであたしのことわかっちゃってんのよ春希~。 もうなんての? 惚れた弱みって言うか?」 | ||
143 | 春希 | Haruki | 「さ、帰ろうな。 駅までなら話の続きも聞いてやるから」 | ||
144 | にしても和泉の奴、 ちょっと家が遠いくらいで、 どこまでめんどくさがり屋… | ||||
145 | 千晶 | Chiaki | 「ま、当たり前と言えば当たり前なんだけどね。 うち、義理どころか実の父親もいないし」 | ||
146 | 春希 | Haruki | 「へ、へぇ」 | ||
147 | 千晶 | Chiaki | 「母親と二人暮らしなんだけどね。 これが結構仲悪くて」 | ||
148 | 春希 | Haruki | 「…へぇぇ」 | ||
149 | 千晶 | Chiaki | 「だから、基本家じゃ寝ないんだ。 大学とか、ネットカフェとか、春希の部屋とか」 | ||
150 | 春希 | Haruki | 「最後のをさも一般的なことのように言うのはやめてくれ。 一度だけだろ」 | ||
151 | 千晶 | Chiaki | 「家には着替えを取りに戻るくらい。 帰っても一時間もいることないなぁ。 下手に母親が帰ってきたらすぐ喧嘩になるし」 | ||
152 | 春希 | Haruki | 「でも、洗濯してくれてるんだろ?」 | ||
153 | 千晶 | Chiaki | 「ハウスキーパーさんがね。 火曜と木曜に来るから、その日が狙い目なんだ」 | ||
154 | なんだよ。 | ||||
155 | 千晶 | Chiaki | 「さて、今度はどんなふうに論破してくれるのかな?」 | ||
156 | なんて、大して酷くもない、珍しくもない、 『どっかで聞いたような話』なんだよ… | ||||
157 | 千晶 | Chiaki | 「…とは言っても、 実際のところ、これで話終わりなんだよね。 う~ん、脚色できないと途端につまんなくなるなぁ」 | ||
158 | いや…どっかで聞いた話よりも、 ほんのちょっとだけ諦められないからこそ、 余計にもやもやする話なんだよ… | ||||
159 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
160 | またしても左手が、携帯に触れる。 | ||||
161 | 『あまり遅くまで待つな』って 前のメールに書いてしまった以上、 レポートの顛末は、日付が変わる前に伝えないと。 | ||||
162 | いや、そんな強迫観念からじゃない。 ただ俺が、言葉を伝えたいだけ。 彼女との会話を、繋がりを求めているだけ。 | ||||
163 | 春希 | Haruki | 「和泉…」 | ||
164 | 千晶 | Chiaki | 「ん~?」 | ||
165 | だけど、だけどさ… | ||||
166 | 目の前で、たった今聞いてしまった、 真実とも事実とも誤解とも嘘ともつかない、 こいつの、ほんのちょっとした愚痴だって… | ||||
167 | 春希 | Haruki | 「お前、やっぱさ…」 | ||
168 | でも、それを聞いてしまったら、 きっと終電も終わってしまう。 | ||||
169 | それにきっと、もう『帰れ』なんて言えなくなる。 | ||||
170 | なら、俺は… | ||||
171 | 1.もうちょっと話すか | Choice | |||
172 | 2.帰ろうぜ、今日は | Choice | |||
173 | 『現在、午後11時55分。 進捗は…だいたい80%くらいかな?』 | ||||
174 | 『というわけで、悪い。 今日中に終了報告は無理っぽい。 というか無理』 | ||||
175 | 『それどころか、ほぼ徹夜確定。 しばらくは返信できないかも。ごめん』 | ||||
176 | 『今回のレポート、テーマがかなり自由でさ、 雪菜の言う通り、確かに水を得たかもしれないけど、 おかげで元気に餌を食い散らかしたって感じだ』 | ||||
177 | 『あれも入れよう、これも入れようってなっちゃって、 気づいたら分量がとんでもないことに』 | ||||
178 | 『人間、分をわきまえることが大事だって、 いつも人には言ってるんだけどな』 | ||||
179 | 『じゃあ、今日はこんなところで。 明日こそ雪菜の“おめでとうメール” 届くように頑張るから』 | ||||
180 | 『って、明日それが届かない状況だと、 俺、進級できないんだけどな』 | ||||
181 | 『おやすみ。 明日こそ…』 | ||||
182 | 春希 | Haruki | 「…ごめん、雪菜」 | ||
183 | 人間、嘘を重ねる時ほど饒舌になるって、 時が過ぎても変わることのない真実だ。 | ||||
184 | 仲直りのとっかかりのためのメール交換で、 こうしてまた、雪菜を裏切るなんて… | ||||
185 | やっぱり俺、雪菜の側にいちゃいけない… | ||||
186 | 千晶 | Chiaki | 「さってっと、今回のらぶらぶメッセージは、と」 | ||
187 | 春希 | Haruki | 「うわぁっ!?」 | ||
188 | 千晶 | Chiaki | 「あ、こら、 見せなさいって春希の恥ずかしいメール!」 | ||
189 | 春希 | Haruki | 「恥ずかしいってわかってんなら覗くな!」 | ||
190 | 俺の目の前の白いバスタオルの隙間から、 たわわな何かが覗いてる… | ||||
191 | 千晶 | Chiaki | 「あ~、隠しちゃ駄目だってば!」 | ||
192 | 春希 | Haruki | 「お前は隠せよ和泉!」 | ||
193 | なんて、俺の後悔や葛藤を、 この女はいつもいつも、台無しにしてくれやがる。 | ||||
194 | 千晶 | Chiaki | 「あ~気持ちよかった。 春希も早く入っておいでよ~。 乾杯は出るまで待っててあげるからさ~」 | ||
195 | 春希 | Haruki | 「いいよ、勝手に始めてろ。 俺は飲まないから」 | ||
196 | 千晶 | Chiaki | 「え~、なんでぇ? せっかく長きにわたる戦いに終止符が打たれたのに、 春希ってばもう次の戦いに思いを馳せてるわけ~?」 | ||
197 | 春希 | Haruki | 「もうちょっと話すとは約束したが、 飲みながらなんて一言も言ってない」 | ||
198 | 千晶 | Chiaki | 「男と女が夜中に二人きりでお酒も飲まなかったら、 やること一つしかなくない?」 | ||
199 | 春希 | Haruki | 「ああ、会話だよな。 …覗くなよ?」 | ||
200 | でもさ… | ||||
201 | さっきの和泉は、ほんの少し… そう、ほんの少しだけだけど、 追い返したらいけないような気がしたんだよ。 | ||||
202 | ……… | .........
| |||
203 | ……… | .........
| |||
204 | 千晶 | Chiaki | 「三年前、なんだよね。 ちょうど大学に受かった頃」 | ||
205 | 春希 | Haruki | 「そ、か」 | ||
206 | 大学進学直前の、両親の離婚。 | ||||
207 | 千晶 | Chiaki | 「ま、さすがにその頃になるとさ、 強がり抜きであたしも子供じゃなかったし」 | ||
208 | 別に珍しくもないし、それほど大げさなことでもない、 世の中に転がりまくってる、ありふれたイベント。 | ||||
209 | 千晶 | Chiaki | 「どうでも良くはなかったけど、 絶対に嫌だとか、あたしを捨てるんだとか、 そこまで思い込めるほどでもなくってさ」 | ||
210 | 春希 | Haruki | 「うん…」 | ||
211 | それがいいことか悪いことかわからないけど、 世の中はそれでも回り、子供はそれでも育つ。 | ||||
212 | 千晶 | Chiaki | 「実際、今でも父さんとはそこそこ上手くやってる。 月イチくらいで会ってごはん食べるくらいだけど」 | ||
213 | 和泉は、今は母親と二人で暮らしてるって言ってた。 | ||||
214 | 千晶 | Chiaki | 「けど、あたしの親権を手に入れた方とは、 なんだか段々歯車が噛み合わなくなっちゃって来てさぁ」 | ||
215 | けれど、父親が『父さん』なのに比べ、 母親に対する指示語の方が、色々とねじくれる。 | ||||
216 | 千晶 | Chiaki | 「親同士がさ、あたしの目の前で、 顔を合わせるたびキッツい喧嘩をしてた時は、 そりゃ、嫌な気分だったけど、こっち側に同情もしてた」 | ||
217 | 千晶 | Chiaki | 「不倫とか、会社のコとどうだとかって話も、 父さんがあまり帰ってきてなかったせいで、 普通に信じられちゃったんだよね」 | ||
218 | 春希 | Haruki | 「そっか…」 | ||
219 | 千晶 | Chiaki | 「それがさぁ…離婚した後、 自分の旦那とやりあってた分のエネルギーが、 全部こっちに来てみたらさぁ…」 | ||
220 | 千晶 | Chiaki | 「ウザいのこれが。 ほんと、際限なくウザいの。 もう、話なんか聞いてらんないの」 | ||
221 | 春希 | Haruki | 「和泉…」 | ||
222 | 千晶 | Chiaki | 「コンパで遅くなったら一時間問い詰められて、 男の子から電話が掛かってきたら、 どういう関係か一から説明させられて」 | ||
223 | そして、和泉の口から零れる、 母親に関するエピソードが、 次々とねじれていく。 | ||||
224 | 千晶 | Chiaki | 「別に過保護だった歴史もないのに、 こっちに隙があると、嬉々として噛みついてくる」 | ||
225 | 千晶 | Chiaki | 「…多分、向こうはそんなこと思ってないんだろうけど、 こうもしつこいと、こっちはそう感じちゃうんだよね」 | ||
226 | ねじれた想いに弾性は働かず、 次から次へと新たなねじれを誘発し、 元の形をわからなくさせていく。 | ||||
227 | 千晶 | Chiaki | 「で、離婚の時のこと考えちゃうんだよね。 そりゃ父さんも出ていくわって」 | ||
228 | 最後に、勝手に不干渉を決めた娘と、 そんな娘を嘆くだけで何もできない母親という、 『よくある親子』のできあがり… | ||||
229 | 春希 | Haruki | 「…ウチとは正反対だ」 | ||
230 | なんという痛し痒し。 | ||||
231 | 千晶 | Chiaki | 「春希んとこは親と仲いいんだ?」 | ||
232 | 春希 | Haruki | 「…いいかどうか、わからないな。 何しろ、この一年会話した記憶がない」 | ||
233 | 千晶 | Chiaki | 「実家、遠いの? あれ? でも春希って付属…」 | ||
234 | 春希 | Haruki | 「こっから二駅。 歩いたって行ける距離だな」 | ||
235 | 千晶 | Chiaki | 「…あんたなんで一人暮らししてんの?」 | ||
236 | 春希 | Haruki | 「部屋借りられるくらいは稼いでるから」 | ||
237 | 千晶 | Chiaki | 「そういう意味で聞いてるんじゃなくて…」 | ||
238 | 春希 | Haruki | 「お前はさ、もし十分稼ぎがあっても、 今の生活続けるつもりなのか?」 | ||
239 | 千晶 | Chiaki | 「…そういうことね」 | ||
240 | ……… | .........
| |||
241 | 春希 | Haruki | 「だから、峰城大付に受かろうが、 テストでトップを取ろうが、 親から誉められたことはなかったな」 | ||
242 | 千晶 | Chiaki | 「…あたしは誉められるべき成績取ったことないから、 あんたの言ってることが理解しにくいけどね」 | ||
243 | 春希 | Haruki | 「ウチの大学受かってるくせに」 | ||
244 | 千晶 | Chiaki | 「…あれは奇跡だった。 うん、あの時だけは絶賛されてもよかったなぁ。 …ちょうど家がそれどころじゃなくなってたけど」 | ||
245 | 春希 | Haruki | 「ま、そんなこんなで、 最初のイベントだけはほとんど同じだったけど、 そこからの分岐が結構違うんだな、俺たち」 | ||
246 | 俺たちは、境遇だけほとんど同じなのに、 親に抱いている感情だって、あまり変わらないのに、 相手との距離感が、あまりにも違いすぎた。 | ||||
247 | 千晶 | Chiaki | 「それでも結果だけはそんなに変わってないのが 笑えるよね」 | ||
248 | 春希 | Haruki | 「そこが笑いどころなのか判断に苦しむけどな」 | ||
249 | けど、和泉の言う通り。 | ||||
250 | 近かろうが遠かろうが、 その距離が適度でなかったら、 結局同じ事なんだなって。 | ||||
251 | 千晶 | Chiaki | 「春希はさ、どっちがいい? 近すぎる距離と、遠すぎる距離のさ」 | ||
252 | 春希 | Haruki | 「その二つは究極の選択だろ…」 | ||
253 | それにしても… | ||||
254 | 千晶 | Chiaki | 「でもさ、『程々がいい』なんて、 なんか人間として小さい発言っぽくない?」 | ||
255 | 春希 | Haruki | 「生まれたときから俺は小さいんだよ。 だから地道にやっていくしかなかったの」 | ||
256 | 千晶 | Chiaki | 「岡山のボンボンのくせに?」 | ||
257 | 今さらながらに思い知る。 …今日は喋りすぎたって。 | ||||
258 | 春希 | Haruki | 「…それだけは話すんじゃなかった。 ネタにするのは月1回までにしとけよ」 | ||
259 | 千晶 | Chiaki | 「全面禁止にしないんだ?」 | ||
260 | 春希 | Haruki | 「守れない目標設定なんてするだけ無駄だ」 | ||
261 | だって、しょうがないじゃないか。 | ||||
262 | 千晶 | Chiaki | 「温情に感謝すべきか、 過小評価を怒るべきか…」 | ||
263 | 春希 | Haruki | 「人に感謝なんかしたことないくせに」 | ||
264 | 今、俺の目の前にいる奴が。 ベッドに横たわり、ずっと俺の方ばかり見つめてる奴が、 自分のこと喋りすぎるんだから。 | ||||
265 | 千晶 | Chiaki | 「ならお望み通り怒る。 春希って酷いオトコ…」 | ||
266 | 春希 | Haruki | 「酷い人間と言え。 お前にオトコっぽい悪さをした記憶はない」 | ||
267 | 家族のこととか、何一つ隠さずバラされたら、 少しは不公平感をなくそうって 配慮してしまうのが俺だから。 | ||||
268 | 千晶 | Chiaki | 「つまり、これからするんだ…」 | ||
269 | 春希 | Haruki | 「おやすみ。 俺、次の日に何も予定がなくても6時半には起きるから。 ついでに人を寝かせておくような思いやりもないから」 | ||
270 | そういえば… 最後に自分のこと話したの、いつだっけ? | ||||
271 | 千晶 | Chiaki | 「…あたしここ数年6時台に起きたことないよ?」 | ||
272 | 春希 | Haruki | 「小学生以来のラジオ体操だってできるぞ。 よかったな。じゃ…」 | ||
273 | 千晶 | Chiaki | 「あ、ちょっと待ってって。 あのさ、寝る前に確認」 | ||
274 | 確か、あいつに話して、 だからあのコに秘密にできるわけなくて… | ||||
275 | 春希 | Haruki | 「なんだよもう… 俺、半分寝かけてたのに」 | ||
276 | 千晶 | Chiaki | 「寝付き良すぎだよそれって…」 | ||
277 | 春希 | Haruki | 「10秒以内に話せ。 そろそろ意識が閉じる」 | ||
278 | 千晶 | Chiaki | 「あのさ、レポート終わっちゃったけど。 …あたしがここに来てもいい理由、 なくなっちゃったけど」 | ||
279 | ああ、また三年前か。 | ||||
280 | 千晶 | Chiaki | 「…でも、また遊びに来てもいい?」 | ||
281 | 春希 | Haruki | 「…今度はちゃんと帰れよ」 | ||
282 | 俺、あの年にどれだけの『画期的な出来事』を 置いてきたんだろうな。 | ||||
283 | 千晶 | Chiaki | 「うん、帰る。始発までには帰っちゃう」 | ||
284 | 春希 | Haruki | 「やっぱ来るなお前」 | ||
285 | あの時に散らばってしまった想いの欠片、 いつか拾い集めること、できるんだろうか… | ||||
286 | ……… | .........
| |||
287 | …… | ......
| |||
288 | … | ...
| |||
289 | 結局。 | ||||
290 | あんなに偉そうに言っておきながら、 俺と和泉が目覚めたのは、 そろそろ正午になろうとしてた頃だった。 | ||||
291 | だってあいつの『寝る前に確認』が、 いつの間にか子供の頃の思い出話とか、 尽きない話題にシフトしてしまっていたから。 | ||||
292 | 俺が、和泉の寝息をようやく確認して目を閉じたとき、 冬の空のくせにすっかり明るくなっていたから。 …俺のいつもの起床時間を過ぎていたから。 | ||||
293 | 和泉はそれからも俺の部屋でダラダラと過ごし、 俺の作った昼食を、俺の分まで遠慮なく平らげ、 結局、部屋を出た頃には、日は赤く染まりかけていた。 | ||||
294 | せっかくの休日が、和泉のせいで、 なんとなく、ダラっと終わってしまった。 | ||||
295 | 別れ際、あいつがにっこりと笑って言った 『貴重な無駄だったね』という一言を、 俺はいつか、実感することができるのかな。 | ||||
296 | ……… | .........
| |||
297 | 千晶 | Chiaki | 「あ、母さん? 昨日着信くれたでしょ? 何?」 | ||
298 | 千晶 | Chiaki | 「…え~と、今南末次にいるから、 そっち着くのは一時間後くらいかなぁ」 | ||
299 | 千晶 | Chiaki | 「ん、わかった。 一時間後、いつものとこで待ち合わせね」 | ||
300 | 千晶 | Chiaki | 「にしても何? 外で夕飯おごってくれるなんて珍しいじゃん? 何かいいことでもあったの?」 | ||
301 | 千晶 | Chiaki | 「あたし? ああ、あたしは…そうだ、母さんありがとね」 | ||
302 | 千晶 | Chiaki | 「…上手いことネタになってくれて」 | ||
303 | 『はい、それじゃご要望にお応えしまして… 北原春希くん、進級おめでとう!』 | ||||
304 | 『あ、今、弟に怒鳴られちゃった。 0時過ぎにクラッカーはまずかったみたい』 | ||||
305 | 『その後も、部屋に用意してあったワイン見て “姉ちゃん、はしゃぎ過ぎだ” って呆れられちゃったし』 | ||||
306 | 『ま、まぁ、それはいいとして、 これで心おきなく冬休みに入れるね』 | ||||
307 | 『春希くんは冬休み、何か予定がある? やっぱり今まで通り、ずっとアルバイト?』 | ||||
308 | 『クリスマスとか、二年参りとか、 そういう皆が休みたい日は稼ぎ時だなんて いつも言ってたもんね』 | ||||
309 | 『今年も、稼ぎ時? 休みたいとか思わない?』 | ||||
310 | 『…別に他意はないんだけどね。 ちょっと、聞いてみたかっただけ』 | ||||
311 | 『はい、他意はありません』 | ||||
312 | 『…現在、一杯目を消費中。 そろそろ二杯目に入りま~す』 | ||||
313 | 『おめでとうメールありがとう』 | ||||
314 | 『まだ後期試験は残ってるけど、 必要単位は取ってあるから、とりあえず四年は確定かな』 | ||||
315 | 『ま、色々あったレポートだけど、 卒論に対しての方向付けにはなったから、 苦しい中にも収穫ありだったかな』 | ||||
316 | 『それよりも雪菜、ちょっとピッチ早くないか?』 | ||||
317 | 『確か本当はワイングラス一杯で酔っちゃうだろ。 明日、ちゃんと起きれるのか?』 | ||||
318 | ……… | .........
| |||
319 | 『せんせ~ 質問に対する返答がまだで~す』 | ||||
320 | 『三杯目~♪』 | ||||
321 | 春希 | Haruki | 「っ…」 | ||
322 | 『だから酔うの早いって! 文章乱れてきてるぞ?』 | ||||
323 | 『いい加減飲むのやめろよ。 また変なこと言い出しても俺知らないからな』 | ||||
324 | ……… | .........
| |||
325 | 『変なことって何かな? 春希くんの冬休みの予定を聞くのが、 そんなにおかしなことなのかなぁ?』 | ||||
326 | 『わたしはただ~、スキーとか、初詣とか、 春希くんもたまにはそういう明るいイベントやんないと、 すぐ老け込んじゃうよって言いたかっただけなのにな~』 | ||||
327 | 春希 | Haruki | 「~っ!」 | ||
328 | 『他意はなかったんじゃなかったのか?』 | ||||
329 | ……… | .........
| |||
330 | 『“なかった”が続いてるよ? 春希くん、それって文法おかしくないかなぁ? 国文のくせに~』 | ||||
331 | 春希 | Haruki | 「ええいやかましい!」 | ||
332 | 『ええいやかましい!』 | ||||
333 | ……… | .........
| |||
334 | 『あはは…怒った。 春希くんが説教しながらキれてる~。 おっかしいんだ~』 | ||||
335 | 春希 | Haruki | 「キれてねえ!」 | ||
336 | 『キれてない! 雪菜の方こそ、そろそろ寝ろ。 明日に差し支えるぞ?』 | ||||
337 | ……… | .........
| |||
338 | 『そだね。 だいぶフラフラしてきた~。 明日、朝からお母さんとお買い物なのにな』 | ||||
339 | 春希 | Haruki | 「………」 | "........."
| |
340 | 『あのさ… モーニングコール、いるか?』 | ||||
341 | ……… | .........
| |||
342 | 『ください!』 | ||||
343 | ……… | .........
| |||
344 | …… | ......
| |||
345 | … | ...
| |||
346 | 雪菜 | Setsuna | 「お、おはようっ!」 | ||
347 | 春希 | Haruki | 「…本当に今まで寝てたか?」 | ||
348 | そんなわけで… | ||||
349 | 一週間ぶりに聞いた雪菜の声は、 やっぱり、なんというか、その… | ||||
350 | 多分、彼女と同じ表情を俺にさせるくらい、 懐かしくて、嬉しくて…ちょっと辛かった。 |
Script Chart
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Introductory Chapter | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
1001 | 1008 | 1009 | 1010 | 1011 | 1012 | 1013 |
1002 | 1008_020 | 1009_020 | 1010_020 | 1011_020 | 1012_020 | |
1003 | 1008_030 | 1009_030 | 1010_030 | 1011_030 | 1012_030 | |
1004 | 1008_040 | 1010_040 | 1012_030_2 | |||
1005 | 1008_050 | 1010_050 | ||||
1006 | 1010_060 | |||||
1006_2 | 1010_070 | |||||
1007 |
Closing Chapter | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Common | Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | ||||||
2001 | 2011 | 2020 | 2027 | 2301 | 2309 | 2316 | 2401 | 2408 | 2501 | 2510 |
2002 | 2012 | 2021 | 2028 | 2302 | 2310 | 2317 | 2402 | 2409 | 2502 | 2511 |
2003 | 2013 | 2022 | 2029 | 2303 | 2311 | 2318 | 2403 | 2410 | 2503 | 2512 |
2004 | 2014 | 2023 | 2030 | 2304 | 2312 | 2319 | 2404 | 2411 | 2504 | 2513 |
2005 | 2015 | 2024 | 2031 | 2305 | 2313 | 2320 | 2405 | 2412 | 2505 | 2514 |
2006 | 2016 | 2025 | 2032 | 2306 | 2314 | 2321 | 2406 | 2413 | 2506 | 2515 |
2007 | 2017 | 2026 | 2033 | 2307 | 2315 | 2322 | 2407 | 2507 | 2516 | |
2008 | 2018 | 2308 | 2508 | 2517 | ||||||
2009 | 2019 | 2509 | ||||||||
2010 | ||||||||||
Setsuna | Koharu | Chiaki | Mari | |||||||
2031_2 | 2312_2 | 2401_2 | 2504_2 | 2511_2 | ||||||
2031_3 | 2313_2 | 2402_2 | 2507_2 | 2513_2 | ||||||
2031_4 | 2313_3 | 2402_3 |
Coda | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Common | Kazusa (True) | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | ||||||
3001 | 3008 | 3014_2 | 3020 | 3101 | 3107 | 3201 | 3207 | 3901 | 3907 |
3002 | 3009 | 3014_3 | 3021 | 3102 | 3108 | 3202 | 3208 | 3902 | 3908 |
3003 | 3010 | 3015 | 3022 | 3103 | 3109 | 3203 | 3209 | 3903 | 3909 |
3004 | 3011 | 3016 | 3023 | 3104 | 3110 | 3204 | 3210 | 3904 | |
3005 | 3012 | 3017 | 3024 | 3105 | 3111 | 3205 | 3211 | 3905 | |
3006 | 3013 | 3018 | 3106 | 3206 | 3906 | ||||
3007 | 3014 | 3019 | |||||||
Common | Setsuna (True) | Kazusa (Normal) | |||||||
3001_2 | 3210_2 | 3901_2 | 3906_2 | ||||||
3015_2 | 3902_2 | 3907_2 | |||||||
3902_3 | 3907_3 | ||||||||
3904_2 |
Mini After Story and Extra Episode | |||
---|---|---|---|
The Path Back to Happiness | The Path Forward to Happiness | Dear Mortal Enemy | |
6001 | 6101 | 4000 | 4005 |
6002 | 6102 | 4001 | 4006 |
6003 | 6103 | 4002 | 4007 |
6004 | 6104 | 4003 | 4008 |
6005 | 4004 | 4009 |
Novels | |||||
---|---|---|---|---|---|
The Snow Melts, And Until The Snow Falls | The Idol Who Forgot How to Sing | Twinkle Snow ~Reverie~ | After the Festival ~Setsuna's Thirty Minutes~ | His God, Her Savior | |
5000 | 5100 | 5200 | 5205 | 5300 | 5400 |
5001 | 5101 | 5201 | 5206 | 5301 | 5401 |
5002 | 5102 | 5202 | 5207 | 5302 | |
5003 | 5103 | 5203 | 5208 | 5303 | |
5004 | 5104 | 5204 | 5209 |
Short Stories | |||
---|---|---|---|
Princess Setsuna's Distress and Her Minister's Sinister Plan | Koharu Climate After the Passing of the Typhoon | This isn't the Season for White Album | Todokanai Koi, Todoita |
7000 | 7100 | 7200 | 7300 |