User talk:Kaezar

From Baka-Tsuki
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Kaezar : Helloe, what do you wanna talk about?

MT 228 Not finished

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- FIN -


 冗談はさておき。  落ち着いた所で、整理してみる。  ひとまず、状況から『ギースが戦力を集めて、真正面から来る』というのを信じた場合、これからの俺の行動は三つだ。

 1、ギースの捜索  2、魔導鎧(俺自身)の強化  3、対抗戦力のスカウト

 並べてみると、今までとそうやることは変わりない。  80年後を見据えた戦力が、数年後ぐらいを見据えたものに変わるってだけだ。

 ただ、ギースも普通の奴ではない。  正々堂々真正面からといっても、どういう形で来るかわからない。  数を集めてくるのか、質でくるのか。

 オルステッド曰く、一式に搭乗した俺に勝てる者は少ないという。  だが、数の暴力ってのは、つい先日体験したばかりだ。  神殿騎士団のような戦い方が出来る、列強クラスの人材が数人。  そんなのが用意出来れば、俺に勝つぐらいは、容易だろう。  なんちゃって。

 でも、そんな人材を集めるには、時間が掛かるはずだ。  そして、数もそう多くは無い。  一年か、二年。  最低でもそれぐらいの期間は掛かると見ていいだろう。

 だが、集まってしまえば、負けると思う。  そんな数年も掛けて周到に用意された罠に捕まって、俺が負けないはずがない。  神殿騎士団だってあれだけやったのだ。  ヒトガミの使徒が、それ以上のことをできないとは思えない。

 だから、事前に阻止しようと思う。  世界各国をめぐり、先んじて仲間に加えていくのだ。  すでに敵に回っているというのなら、各個撃破してもいい。

 つまり、これからの仕事では、全て敵がいると想定して動く事になる。  少なくとも、ギースがいる可能性が高いのは、王竜王国と、魔大陸だ。

 特に、魔大陸の確率が高そうだな。  アトーフェとか、俺を倒すと聞けば、喜んで力を貸しそうだしな。  魔大陸は最後にする予定だったが、早めに行かねばなるまい。

 でも、優先順位としては、王竜王国が先でいいだろう。  あそこにいる死神ランドルフは、『二式改』に身を包んだ俺に勝利している。  確実な駒だ。  先んじて、抑えておきたい。


 方向性は決まった。  傭兵団はまだ軌道には乗りきっていないが、ラトレイア家と教団の後援もある。  二つのお偉いさんから仕事をもらっているうちは、立ち行かなくなる事もあるまい。  最低限の事はできた。

 一度、本部(シャリーア)に戻ろう。  そこで、改めて、今後の動きについて、オルステッドと詰めるのだ。

 だが、その前に各所への挨拶はしておかなければなるまい。


---


 ラトレイア家へと赴き、エリスを紹介すると同時に、帰還を告げた。

「そうですか」

 クレアはあまり礼儀のなっていないエリスを見ても顔をしかめる事はなかった。  俺が言ったことを守ってくれているのだろう。  ただ彼女は、ただただ残念な顔をしていた。

「ゼニスは無論、連れて帰るのですね?」 「はい。俺が責任を持って、世話をします」 「わかりました」

 ゼニスはこの一ヶ月、ラトレイア家で世話を受けていた。  ゼニスはあれ以来、忙しい俺とアイシャに代わり、ラトレイア家で世話をしてもらっていた。  彼女はラトレイア家が懐かしいのか、よく動いていたと言う。  屋敷内を散策したり、庭を見て回ったり。  事ある毎に、お手伝いさんを連れて、外に散歩にも出ていこうとしたり。  相変わらず、ボーっとしたままだったが、久しぶりの故郷を満喫していたのは、よくわかった。

 そんな彼女を見て、ラトレイア家の紳士淑女の皆さんは、悲しそうな顔をしていたという。  長男のエドガーに、長女のアニス……ギースのせいで、彼らには挨拶もできなかった。  だが、一応「またくる時には必ず挨拶を」と、言伝を頼んでおいた。

「最後に、ノルンの顔を見れなかったのが、心残りですが」 「また来ますよ、今度はノルンや、俺の子供も連れてね」

 紆余曲折あったが……。  クレアも悪い人間ではない。  嫌な人ではあるが、悪くはない。  妻や子供を顔見せするぐらいなら、何の問題もない。  今度こそ、挨拶だけで済ませるのだ。

「いいえ、恐らく、私の年齢から言って、これが今生の別れとなってもおかしくありません」

 今生の別れ。  彼女の年齢は、すでに60を超えている。  この世界の平均寿命は知らないが、彼女はまだまだ頑健だ。

 だが、シャリーアまでの往復の距離は約4年。  近い距離ではない。  行ってすぐ戻ってくるわけもなし、次に会うのは、軽く10年以上先。  その頃、クレアは70歳以上。  何があっても、おかしくない歳ではある。

 と、考えているのだろう。

 転移魔法陣の事を伝えてもいいんだが。  あんまり公に転移魔法陣を使いまくってます、って言うと、どこから圧力が掛かるかわからない。  一応、世界的に禁忌とされているものだしな。

 アスラ王国でも、王竜王国でも、おそらくミリスの王家でも、万が一に備えて使われてはいるんだろうけど。  でも、世界三大国家たる彼らですら隠してるんだよなぁ。

「ルーデウス様。ゼニスを連れてきてくれて。本当にありがとうございました」

 クレアはそう言って、頭を下げた。  彼女は先日、ゼニスと一緒に馬車に乗って、劇なんか見に行ったりしていたそうだ。  クレアはずっとしかめっ面のままだったが、お手伝いさん曰く、こんなに嬉しそうな大奥様を見るのは久しぶりだと言っていた。

「近いうちに、またきます」

 気づけば、そんな言葉が出ていた。

「ですが……」 「必ず、来ます」

 腹に力を込めて、強い力で言う。  すると、クレアはふっと顔をゆるめた。

「ゼニスは、本当に良い息子を持ちましたね」

 クレアは、最後にそう言って笑った。


---


 神子の所にも挨拶に行った。

 おみやげは二つ。  俺の腕輪とよく似た装飾を持つ腕輪と、オルステッドから送られてきた守護魔獣召喚のスクロールだ。

 この腕輪、アイシャがこの一ヶ月の間に、ミリスの職人に頼んで作っておいたものだ。  本来なら宝石がはめ込まれる台座には、石が埋め込まれている。  これは俺が土魔術で作った黒く光沢を持つ石で、龍神の紋章が刻まれている。  誰が見ても、龍神配下の証とわかるだろう。

 そんなものを持って神子を呼び出してもらうと、取り巻き連中が出てきた。

 中には、テレーズの姿もあった。  彼女は、左遷を免れた。  俺の名前が書かれた嘆願書が役に立ったらしい。

 まあ、左遷の代わりに降格したらしく、隊長ではなかった。  新しく派遣されてきた隊長の下で、副隊長的な位置に落ち着いていた。

 ちなみに、新隊長はあまり柔軟な人ではないようだった。  腕輪はともかく、教団内で怪しげな召喚魔術を使うなど言語道断と拒否された。  もっとも、「これなるは龍神オルステッド様が、部下(ルーデウス)を守ってくれた神子に対する贈り物! 一介の隊長ごときに拒否する権限なんてねぇ!!」なんて感じで無理に押し通したが……。  この隊長さん、こんなんじゃきっと出世できないな。

 スクロールから出てきたのは、銀色の梟だった。  体長は1メートルぐらい。  レオに比べると小さいが、それでも存在感があり、金色の瞳には神々しさがあった。

 ペルギウスの精霊シリーズは出てこなかった。  あれはウルトラレアだから、そうそう出てはこないだろう。  今回は神子専用ってことで、パックも違うだろうしな。

 何にせよ、聖獣っぽいのが出てよかった。  これで黒光りするでっかいクモとか出てきたら、隊長さんの拒否を押し通せない所だったかもしれない

「大切にしますね!」

 神子はその梟に目を輝かせていた。  手を伸ばして撫でると、気持ちよさそうに目を細める梟。  召喚された直後から自分になついている動物に、神子は大層お気にめしたようだ。

「いや、大切にされてください」

 ペットじゃない。  だから、大人しく守られていてほしいものである。

「では、またいずれ」 「はい、ルーデウス様も、お達者で!」

 最後に、テレーズ以下、『聖墳墓の守り人(アナスタシア・キープ)』にも頭を下げておいた。  彼らとも、また会うことがあるだろう。


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 最後に、クリフだ。

 クリフはというと、こちらも滑り出しは順調であるようだった。  先日の一件で、クリフの名前が教皇派、枢機卿派の両方に知れ渡ったのだ。

「クリフ・グリモルが龍神の右腕ルーデウスを説き伏せ、神子様を救い出した」 「教皇、枢機卿の争う中で正義を語り、正道を通した」 「ミリス教徒の鑑。あっぱれな男」

 なんて噂がまことしやかに流れている。

 面白いのは噂の出処だ。  聞く所によると、神殿騎士団の大隊長、聖堂騎士団の副団長といった面々が噂を流したらしい。  ゆえに下っ端の騎士や神父たちは信憑性の高いものとして、教皇が何やら凄い懐刀を手に入れたのだ、と認識しているようだ。

 そして、そんな噂に後押しされてか、クリフ自身、実際にお仕事の方も任されるようになったようだ。  偉い貴族の冠婚葬祭だな。

 いくら政争があろうとも、坊さんの役目は変わらない。  そして、クリフはなんだかんだ言って、シャリーアで実務経験も積んできた。  新人とはいえできることは多く、現場でも極めて優秀な人材と見られているようだ。

 そんな彼を煙たがっているやつもいるようだが……。  まあ、それは仕方ないだろう。  いきなり優秀なやつが入ってきて、しかもそれが教皇の孫。  嫉妬の炎を燃やすやつがいても、おかしくはない。  それをどうにかするのは、クリフの役目だ。

 もっとも、あまり心配はしていない。  今のクリフなら。  あのクリフなら。  何かされたとしても、立派に乗り越えてみせるだろう。

 ただ、一つだけ懸念がある。

「じゃあ、クリフ先輩。一旦帰ります」 「ああ……リーゼの事を頼む」 「もちろんですよ。浮気しないように言っときます」

 クリフは、まだ結婚したことを誰にも打ち明けていないらしいのだ。  心に決めた相手がいる、と公言してはいるそうだが……。  クリフらしくないねぇ。

 でも、エリナリーゼと結婚したってのを、公表しにくいのはわからんでもない。  このへんの冒険者にも、エリナリーゼ・ド・ビッチの噂は広まっている。  特に、現在ベテランとして活躍してる中には、ハヂメテを奪われちゃった子もいる。  そんなのと結婚したって話は……まだしないほうがいいだろう。  後ろ指を刺されても大丈夫なぐらいビッグになったら公表する、って形でも悪くはあるまい。

 いずれだ。  死ぬまで隠し通そうと思っているわけでもない。

 でも、今後、もしかすると見合いの話なんかも出てくるかもしれない。  ウェンディだって、お手伝いさんで、夜になったら帰るとはいえ、若い男女が一つ屋根の下……。

 いや、大丈夫だ。  クリフだもの。  俺じゃあるまいし。  あんな偉そうに説教した人が、浮気なんてするはずもない。

 俺じゃあるまいしね。

 ……と、こうやって念を押しているとフラグになってしまうな。  ほんと、頑張ってくださいよ、クリフ先輩。

「クリフセンパイも、くれぐれも浮気しないように。ミリス様が見てますよ」 「僕がするわけないだろ。しばらく、そんな暇は無いさ」

 クリフは最近忙しそうにしている。  仕事は順調で、さらに教皇の右腕としても認知され始めている。  相当な実力者と見て、クリフに近づいてくる貴族もいる。

「ホントですか? 先輩は最近モテモテですからねぇ。ウェンディちゃんあたりをコロッと押し倒したりしちゃったりして」 「ウェンディは妹みたいなもんだ。君じゃあるまいし、手出しするもんか」

 俺だって妹には手出ししてません!  失礼しちゃうわね。  と、俺が憮然とした顔を作っていると、クリフがフッと視線を落とした。

「それにしても……本当に、自分の力だけやりたかったんだけどな」

 俺は笑いながら答えた。

「これがクリフ先輩の力じゃなかったら、一体なんなんですか」 「ははっ」

 かっこいいこと言ったつもりだったが鼻で笑われた。  確かに、クリフが連れてきた俺が問題を起こして、クリフが解決する。  マッチポンプ的な形になった感じはある。

 でも、クリフはそんな中で自分らしい行動をして、それが認められたのだ。  やっぱりクリフの力だよ。

「……何にせよ、お礼は言っとくよ。君のおかげで、少しは認められたと思う」 「こちらこそ、おかげでミリスと顔つなぎが出来ました。傭兵団の方も設置できましたしね」

 ルイジェルド人形の販売は……ちょっとまだ難しそうだ。  現状で進めていけば販売までは行けるだろうが、買う人が少なそうだ。  傭兵団の方もまだ安定してないから問題も多そうだが……。  何、問題が起きたら、それをクリフの出世の足しにでもしてもらえばいい。

「ここから先は、僕一人でやるからな」 「ええ、頑張ってください」

 予定とは少し違ったが、エリナリーゼとの約束も果たせただろう。  クリフは、もう大丈夫だ。  他の神父たちとどう接する形になるかはわからないが、  しかし、スタートはうまく決まったと言っても過言ではあるまい。

 今度こそ、クリフに任せよう。  まだまだ教皇派と枢機卿派の戦いは続くだろう。  その中で、クリフが自分なりに頑張り、成果を上げて欲しい。

 まぁ、ダメだったら、戻ってきてうちの社員になればいいだけだ。  気楽にやってほしいね。

「この一ヶ月、あまり手伝えなくて済まなかったな……」 「いいえ、気にしないでください」

 俺には俺の戦いがあり、クリフにはクリフの戦いがある。

「でも、もしヒトガミの手先に何かされたら、すぐにでも石版でメッセージをください。すぐに駆けつけますから」 「もちろんだ」

 クリフは力強く頷いてくれた。  手伝わないとは言っても、彼も仲間だ。  だが、俺が庇護しなきゃいけないほど、弱くもないだろう。

「じゃあ、クリフ先輩……お達者で……」 「ああ、君も達者でな」 「といっても、一年後ぐらいにまた顔を出すかもしれませんがね」 「その頃には、リーゼの事を堂々と紹介できるぐらいにはなってるよ」

 そうそう、エリナリーゼの呪いの事もある。  長いことお別れってわけではない。

「……それから、君が先輩って呼ぶのもやめてくれるぐらいにもね」 「や、それはもうクセなんで、一生無理だと思いますよ」

 そう言うと、クリフは肩をすくめて苦笑していた。


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 こうして、ミリスでの戦いは終わった。  ラトレイア家との衝突に、ミリス教団内部での抗争。  そしてギースの裏切り……。

 色々あったが、お陰でまた一つ、目標が決まった。


 次の敵は、ギースだ。 第21章 青年期 クリフ編 - 終 -